2022.10.29 343pv

元エステティシャンの美容ナース。高いカウンセリング力で本当の悩みを引き出す

Erika

――Erikaさんの経歴を教えてください。

エステティシャンを経て看護師になりました。もともと、スポーツトレーナーの専門学校に通って、ジムで働きながら勉強をしていましたが、途中で私のやりたいことはトレーナーではないかもしれないと気づいたんです。専門学校からエステに就職する道もあると教えてもらい、エステ業界に就職しました。

初めは安易な気持ちで就職したものの、天職かと思うくらいにエステティシャンの仕事は楽しいものでした。ハンドでお客様の顔や体をお手入れすることは、自分自身でも心地よく感じましたし、私の技術で結果が出て、お客様に喜んでいただけるのがすごく嬉しかったんです。

 ホテル内のエステで3年半ほど働いたあと、美容ナースを目指すため、25歳の時に看護専門学校に通い始めました。28歳で看護師になり、総合病院の消化器内科・腫瘍内科の混合病棟で約3年働きました。

その後、大手美容クリニックで経験を積み、2019年からアンチエイジングや再生医療に力を入れる美容外科・皮膚科の「東京トータル美容クリニック」に勤務中です。看護師長として人材育成やマネジメントも行っています。

――美容看護師へキャリアチェンジしようと思ったのはどうしてですか?

エステでは痩身のメニューも提供していました。その当時の痩身エステは、かなり高額なものも多く、自分が金額に見合った施術を提供できているのか疑問に感じるようになったんです。そこで、より確実な効果が望める施術を提供できるのは“医療”なのかもしれないと感じ、美容医療に興味を持ち始めました。

当時、容姿に悩む女性を美容整形で美しくするテレビ番組が流行っていて、整形ってすごいなと率直に感じていたのもきっかけの一つでした。

そして、そのままエステティシャンを続けて独立するか、美容医療の道に進むか悩んでいたときに、東日本大震災が起こって。私は宮城県出身で、当時は地元には住んでいませんでしたが、今後の自分の人生について深く考えさせられる出来事でした。震災が契機となり、看護師を目指す決心がつきました。 

――得意な施術について教えてください。

特に力を入れているのは、高周波治療のサーマクールで、ご指名も多くいただいています。サーマクールは、たるみ改善やリフトアップに用いられる治療です。一人ひとりのたるみ方や骨格に合わせ、マシンの当て方を調節すると、より高い効果が見込めます。ナースの技術で結果に差が出るので、そこにやりがいを感じています。 

サーマクールは、人によっては痛みを感じる治療です。にも関わらず、結果に満足されて、痛くてもまた受けたいとご希望される方は少なくありません。

サーマクールに限らず、患者様の状態を見極めたうえで丁寧に施術することにこだわっています。通常はベッドに寝ていただいた状態で施術を行いますが、横になるとたるみ具合がわかりにくくなります。ですので、事前に撮影した患者様の画像を何度もチェックしながら施術するようにしています。 

――エステティシャンの経験が生かされていると感じることはありますか?

東京トータル美容クリニックでは、カウンセリングから施術まで全て看護師が担当しますので、エステで学んだ接遇やコミュニケーションのスキルが生かせています。

美容クリニックのカウンセリングでは、丁寧さは大切ですが、敷居が高い印象を与えてしまうと患者様は話しにくくなります。患者様が本当に求めていることを引き出すには、丁寧かつアットホームな接客がベストだと思っていて。患者様とコミュニケーションを取るコツは、看護師の仕事をしていただけでは身に付かなかったところかなと思います。 

カウンセリングだけでなく、肌の触れ方、タオルのかけ方、ターバンの巻き方、ジェルの塗り方など、美容ならではの細かな気遣いやテクニックもそうです。

美容クリニックや看護師を支援する活動も行っていきたい

――施術ではどんなことを心掛けていますか?

プロとして、患者様が美しくなるためには何が必要なのかを本音でアドバイスするようにしています。本人が気になっているところを改善してあげたいのはもちろん、看護師の目から見てアドバイスしたいところがあれば、包み隠さずにお伝えし、適切な治療やケアをご提案します。

 きっと、患者様の要望通りに施術をしていたら、あれもこれもときりが無くなって、本人もゴールがわからなくなってしまうはず。だから、患者様が本当に悩んでいることは何か、カウンセリングで引き出してあげることが大切です。 

また、顔の一部分に異常なこだわりがある方は、精神面のケアが必要な場合もありますので、うまく導いていけるよう接することを心掛けています。

――美容業界へはどんな思いがありますか?

医師、看護師、カウンセラーなど職種に関係なく、業界全体の技術や知識、安全性などのレベルが向上していけばいいなと思っています。

実際にレベルが上がってきているとは感じますが、自由診療だとビジネス色が強くなりがちなのも事実。私たちが提供しているのは医療であることを忘れたくないと思っています。医療だからこそ、治療のリスクや副作用を理解し、もし何か起こった場合は適切な対処ができるよう、安全性への意識を高く持ち続けたいです。 

美容ナースという職業の認知度が向上すると共に、イメージも良い方向に変わっていってほしいとも思っています。病棟の看護師と比較されることもありますが、美容医療に真剣に向き合い、真面目に勉強している美容ナースはたくさんいます。そのことを世間に広めていきたいです。

例えば、YouTuberも、ヒカキンさんなどのスターが輝き始めたことで、YouTuberになりたい人が急増しました。美容ナースも同じで、看護師の働き方は多様なことをもっと知ってもらいたいです。

看護師を目指す人が減っているとも聞いています。看護師が働ける場所は病院だけではないし、フリーランスなどの働き方も可能な時代になってきています。美容ナースの実情を知ってもらうことで、美容ナースに限らず、看護師を志望する人が増えたらうれしいです。 

――Erikaさんが今後挑戦したいことを教えてください。

erika

エステティシャンの時も、美容看護師になってからも、患者様と直接関わることが一番好きです。これからも続けたいと思っています。 

ただ、現場にいると、改善したほうがいいと思う点や、現状への疑問もたくさん生まれてきます。それを良い方向に変えていくための活動にもチャレンジしたいと考えていて。その一つとして、来年出版予定の「美容看護師の教科書」の作成に携わっています。美容ナースの仕事や働き方について解説した、美容ナースのためになる一冊を作ろうと奮闘しているところです。 

新しく美容クリニックを開業する人からご相談をいただくことも増えてきたので、クリニック内部のコンサルティングや人材育成にも携わっていければ。現場を経験している看護師の目線で、悩んでいる方にアドバイスしていけたらなと思っています。

取材・文/小原らいむ