2022.11.08 109pv

輪郭形成に強いクリニックの看護部長。大切にしているのは誠実さと共感力

木村 真理子

――まずはご経歴をお聞かせください。

看護師免許を取得してから約7年間は、呼吸器外科の病棟に勤務し、病棟主任も経験しました。その後、大手美容クリニックに転職。外科と皮膚科どちらも展開していましたが、外科がメインのクリニックでした。そこでは9年間働き、管理職も務めました。

2020年からは、東京・渋谷のArkclinic(アーククリニック)と、Arkskinclinic(アークスキンクリニック)で看護部長を務めています。院の立ち上げから関わっていて、今は管理業と並行して施術にも入っています。

Arkclinicの特徴の一つは、ご提案できる治療のバリエーションが豊富なこと。骨切りなどの根本的治療を必要とされる患者様から、それらの治療を終えて、次は肌治療に専念したいという方まで、幅広いニーズに対応できます。 

たるみ一つとっても、まずは骨からアプローチして、次にハイフや糸リフトで仕上げていくことが当院でできます。看護師としても、提案できる治療の数が多いほどやりがいを感じられますし、患者様のご満足にもつながると思っています。

――なぜ美容ナースになろうと思ったのでしょうか。

看護師として前向きな気持ちで働けるところが美容医療の魅力だと思っていますし、美容ナースになった理由でもあります。

 私が働いていた呼吸器外科に入院される患者様は、基本的には現状維持か、それ以上悪化させないための治療を行っています。呼吸が苦しくなっていくのは本当に辛いもので、看護する側も暗い気持ちになってしまうことがありました。

 一方で、美容医療は、「きれいになりたい」「変わりたい」という前向きな気持ちでのぞむもの。特に、Arkclinicが力を入れている骨切りなどの輪郭形成手術は、美容医療の中でも変化の大きな治療です。看護師としてもやりがいや喜びを感じられていますね。 

――外科・皮膚科どちらも携わっているとのことですが、その中で得意な施術はなんですか? 

外科での経験が豊富で、解剖を理解した看護師だからこそ提供できる、安全性と効果を両立したハイフが強みです。

Arkclinicでは骨切りに注力しているとお話ししました。骨切り手術の介助で学んだ解剖知識をハイフに生かしています。

ハイフは、神経損傷などのトラブルが起こるリスクもゼロではありません。解剖を理解した看護師が施術することで、リスクに最大限配慮しながら、効果的な照射ができます。

――他、患者様と接するときに気を付けていることはありますか?

最近は、SNSなどで自ら情報収集をしたうえで来院される方が非常に多いです。わかりやすく話すことは大切ですが、知識が豊富な患者様に対し、あまりに簡単な言葉を選びすぎるのは良くないと思っていて。ある程度、専門的な話をしたり、医療用語を用いたりするほうが、安心していただけるケースもあります。患者様に合わせて説明方法や話し方を調節しています。

そして、ただ「大丈夫ですよ」とお伝えするだけでなく、「痛み止めを使用できますので大丈夫です。痛み止めにも種類があり、効果の強さや使用できる感覚も決まっています」とできる限り細かく説明するようにしています。具体的に説明したほうが患者様に安心感を与えられると思っているからです。

外科・皮膚科どちらの知識も持つ美容ナースが理想

――施術で大切にしていることはなんですか?

接遇やホスピタリティを磨くことはもちろん重要ですが、クリニックにはその道のプロである受付スタッフやカウンセラーがいます。ですから、看護師としては、一歩深い医療知識を持ち、それを患者様に適切に伝えられる存在であるべきだと思っています。 

そのために、当院で取り扱っている治療や薬剤一つひとつの作用や副作用、リスクなどは全て頭に入れています。

患者様にご不安を抱かせないように、質問された事には誠実に、信頼していただける返答を心掛けています。

あとは、共感も大事にしてきました。悩みや痛みに共感し、適切なアドバイスをすることで、この人の言うことなら信頼できると思っていただけるような対応を目指しています。

――美容業界への思いはありますか?

私が美容ナースになって10年近く経ちますが、その間に業界は大きな変貌を遂げましたし、これからも変わっていくのだと思います。その中で一番気になっている業界の動きは、美容ナースの働き方ですね。

個人的に最強だと思うのが、外科の知識も持つ皮膚科の美容ナース。私自身もそういうナースを目指していますし、後進の教育にも力を入れているところです。

 看護師が施術を担当する皮膚科では、自立した考え方を持って働いている方が多い印象ですし、これからも増えていくのだろうと思っています。

 一方、外科は、医師ありきの治療ではありますが、変化の大きな治療に関わることができます。その経験と知識を生かした皮膚科施術ができる看護師が増えていけばいいなと思います。 

――最後に、今後の目標を教えてください。

看護部長を務めるArkclinicで、今後ナースの数が増えても、全員が一定のレベル以上の医療を提供できるような仕組みを整えることが目下の目標です。

 私は、病棟出身の看護師ですので、チーム医療という考え方が根強くあります。手術に携わるナースにはチームプレーが不可欠ですので、お互いの弱点を補い合える組織にしていきたいです。皮膚科は、個人プレーが求められる部分もあるので、バランスをどう取っていくかも考える必要があるでしょう。どちらにせよ、個々のいい部分を引き出せるような組織を目指します。

 今は、実際の教育や指導に加え、マニュアル作成などのシステム作りにも力を入れています。まだ開業して2年のクリニックですので、課題も多くあります。課題を精査し、きちんとした体制を整え、患者様に質の高い医療を提供していけたらと思っています。

取材・文/小原らいむ